耳鳴りについて
耳鳴りは生理的な感覚のひとつであり、病気ではありません。何らかの病気が耳鳴りを引き起こすことがありますが、多くの場合は大きな心配の必要はございません。
しかし、疾患が原因の場合もあり、ご自身で判断してしまうことはリスクがありますので、耳鼻咽喉科を受診し、検査を受けることをお勧めいたします。
1日以上耳鳴りが続き、改善しそうにない場合、まずは当院までご相談頂ければと思います。
耳鳴りの原因
耳鳴りの原因は様々な原因が考えられますが、主に内耳の疾患が原因の場合が多いです。
その他にも交通事故や誤ったイヤホンの使用、外傷性のもの、加齢によるもの、高血圧、脂質異常症、脳の疾患、女性ホルモンの異常、肩こりなど幅広い原因がございます。
このような疾患が原因でない場合には、慢性疲労や精神的ストレスなどから起こることも考えられます。
耳鳴りを自覚するしくみ
外からの音の刺激がないにもかかわらず、耳や頭の中で音を認識する状態のことを耳鳴りといいます。
また、難聴によって脳が過敏に反応するようになり、脳によって耳鳴りという音が作り出されている状態も考えられます。
脳で耳鳴りを実感する
私たちは、身体でものの実感や存在を認識するだけでなく、知覚活動や精神活動からも明確な存在感を得ることができます。このような知覚活動や精神活動は脳神経系の働きによって機能しています。
私たちが心の領域として認識しているものは、脳の活動でもありますので、このような全ての領域が一体となり、ものの存在を実感しています。そして、耳鳴りは脳で認識するものであり、脳から生まれた音であるといえます。
耳鳴りは心と身体の両方へ影響します
耳鳴りは、音を感知することによる生活や健康状態への影響(集中力の低下や不眠など)だけでなく、音による不快感からのストレス、音が消失しない不安など精神的な影響も大きく、周りの方が考えるよりも耳鳴りにお悩みの方の不安や不快感、生活への影響は大きいと考えられます。
当院で行っている耳鳴り治療
様々な原因が考えられるため、的確な診断と治療が求められます。
診療で耳鳴り症状や病気への理解
初診、再診を行っていく上で、ご自身の病状についてきちんと把握することが重要となります。
病気の治療にあたり、ご自身で理解して納得して進めることが、効果的であると言えます。
また、治療に必要な時間や経過についても、ご自身の病状への理解度によって変動すると考えられています。
服薬治療
患者さんの状態を考慮して、適切な処方を行います。薬の効き目は患者さんによって異なります。
生活習慣改善のフォロー
耳鳴りが悪化しないように、悪化に繋がる原因を減らして改善に繋がる原因を増やすよう、生活習慣を見直すことが大切となります。
適度な運動習慣
適度な運動習慣を身につけることで、基礎代謝が上がり耳の循環や代謝が良くなります。
また、運動によって筋力が上がると、ぐっすり眠るために必要となる神経伝達物質が生成されます。
なお、耳管開放症の患者さんは運動によってかえって症状が悪化する恐れがありますが、適度に運動を行うことはとても大切です。
食習慣の改善
食事内容を見直し、良質の脂質、植物性タンパク質を積極的に摂取するようにすることで、消化機能が向上します。
耳鳴りの患者さんの約8割がやせ型であり、消化機能の低下や鉄欠乏貧血を起こしていることが多いと言われています。
したがって、タンパク質、ビタミンB群、鉄分などを積極的に摂取し、逆に白砂糖や精製塩などの精製食品の摂取を控えることが必要です。普段使っている調味料を黒砂糖や天然塩に変える、調理法を変えて脂肪分が多い食事を控えるといったことを意識していきましょう。
サプリメントなどによる栄養補助
ビタミンや鉄分の不足を補うために、必要な栄養を補助することも必要となります。
嗜好品
過度な飲酒・喫煙の習慣を続けてきた方は、動脈硬化の予防のためにも、適量に抑えることが必要です。
入浴方法の見直し
入浴時間は長くなりすぎないようにしましょう。
また、就寝の1.5時間〜2時間前までには入浴を済ませ、難しい場合は朝起きてから短めの入浴をするようにしましょう。
睡眠習慣の改善
耳管開放症の方はぐっすり眠ることが大切ですので、睡眠不足とならないような生活習慣を心がけましょう。
PCやスマホが普及した現代では、脳神経に負担がかかりやすいため、日中の過ごし方にも注意することで、睡眠の質向上に繋がります。また、日頃から、ストレス解消、適度な運動、リラクゼーションを意識することも大切です。
テレビやパソコンの使用時間の減少
PC、スマホ、テレビを長時間見続けることは控えて、脳神経への負担を軽減させるようにしましょう。
就寝前の1〜2時間は画面の視聴を控えると、良質な睡眠に繋がります。特に、やせ型の方は神経への負担が大きくなりやすいため、適度な視聴時間を守るようにしましょう。
TRT療法(耳鳴り再訓練療法)
耳鳴りに慣れる習慣を身につけ、順応していくことを目指す治療です。
TRT療法では、具体的には以下で説明する音響療法と指示的カウンセリングを実施していきます。
音響療法
耳鳴りに慣れる習慣を身につけ、順応することで、次第に耳鳴りが気にならないようになります。
他の音に意識を向けることで、脳から出る耳鳴りの音への意識を小さくしていきます。
指示的カウンセリング
耳鳴りへの適切な対応方法や知識を身につけることで、耳鳴りが起こっても過度な不安を感じないようにしていきます。ご自身の趣味にたくさん時間を使って耳鳴りへの意識を逸らすことも大切です。
TRT療法のメリット
耳鳴りに順応することで、次第に気にならなくなっていきます。
心理的な順応の後、知覚に順応し、その後に聴覚が順応することで耳鳴りの音が気にならないようになるという流れです。
TRT療法では、心理的にも聴覚的にも順応が必要ですが、順応できずにかえって症状の悪化と悪循環に繋がるリスクもあります。
したがって、音響療法で適切な音を聞き、カウンセリングによって適切な対応方法と知識を身につけることが大切となります。
TRT療法の流れ
Step 1不安の払拭
耳鳴りへの不安を取り除きます。耳鳴りのことを適切に理解し、決して怖いものではないということを認識することが大切です。
Step 2音響療法の開始
適切な音響療法によって耳鳴りが気にならなくなるという方が大半です。なお、気にならなくなるまでにはある程度の時間が必要となります。
Step 3音響療法の経過観察
音響療法によって耳鳴りに順応すると、耳鳴りによる苦痛や焦燥感が少なくなります。音響療法を継続すると、耳鳴りへの意識が薄れていきます。
Step 4知覚の順応
知覚の順応によって、不意に耳鳴りが以前よりも小さくなっているように感じます。